「子供を授かる」という言葉
私は提供の際に、「子供を授かる」という言葉をよく使います。それは、子供を妊娠し出産することは、人間の思い通りにはならない要素を多分に含む、幸運な出来事だと考えているからです。
まず、妊娠のためには精子と卵が受精する必要があります。この現象一つとっても、周期に合わせて放出された卵に、適切なタイミングで精子が辿り着かなければなりません。精子や卵がどちらとも正常であることも必須の条件であり、奇形や染色体異常があった場合は、受精が起きてもまず妊娠はできないでしょう。
また、受精が完了した後には、子宮に受精卵が着床し、正常に育っていく必要があります。細胞内の多くの要素が複雑に絡み合い、一つの受精卵が分裂を繰り返し、やがて子供の体になってゆくのです。この過程でも、何か異常が起きると発生が上手くいかずに胎児は育つことができなくなってしまいます。
そして順調に育っていた胎児も、外部からの強い衝撃や感染症などで命を落とすことも十分にありえます。
これらの要素を全てクリアした時にだけ、子供は生まれてくることができるのです。
このように、現代科学をもってしても制御しえない数々の不確定要素が妊娠・出産という現象にはつきまといます。それらをくぐり抜け、無事に子供を得られることは、まさに奇跡と言っても過言ではないことでしょう。子供を得ることはこれほどに人知を超えた幸運なことなのだという意味を込めて、私は「子供を授かる」という言葉を提供の際には使わせていただいております。
余談ですが、「子供を授かる」という言葉には、妊娠を希望される方が「私から子供を授けられる」といった意味合いは決してありません。私はそのように奢った考えではなく、人知を超えた幸運が妊娠希望者の方に訪れるようにという思いを込めて、この言葉を使っているのです。
願わくは妊娠を希望する方々に、子供を授かるという幸運が訪れますように。
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